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カラダにいいアート
2015.02.24

アスリートを撮る写真家が、
レンズを介して本当に見たいもの。

 仕事とは別に、自分の作品としてプロ・アマ問わずアスリートを写真におさめ続けている写真家の松本昇大さん。松本さんは、カラダと向き合う人のどんなところに惹かれてカメラを向けているのだろうか。レンズを通して見つめているカラダと向き合う人の真の姿とは。

 

(写真)昨年、原宿のVacantにて、孤高のアスリートを追いかけた作品を展示した個展『The Loneliness of the Long Distance Runner』を開催した。

 

 元来カラダを動かすことが好きで、学生時代も野球や陸上競技に取り組んでいたという松本さん。幼い頃からヒーローはいつでも「アスリート」だった。高校を卒業して写真の専門学校に入り、アスリートにカメラを向けるようになったのも自然な流れだったのかもしれない。

 

「僕は上を目指して陸上競技を続けていましたが、トップにはなれなかった。トップに立つ人はどんなメンタルなのか知りたくて、レンズを通して観察していたら、少しはわかるんじゃないかと思ったんです」根性があって、努力をするのは当たり前。それでもトップに立つというのが難しいということを、自分の競技人生で目の当たりにした。トップに立てない人と立てる人は、メンタルに大きな違いがあるのではないかと思ったという。

 

「2008年頃から撮り続けていますが、トップに立つ人の気持ちには近づききれていないので、これからもアスリートを追い続けたいと思っています。ただ、『こんな風になりたい』という漠然とした思いではなく、『こうなる』という強い意志がある人がトップに立てるのではないかと思うようになりました」。

 

 松本さんが好んで撮影するのは、所謂スポーツ新聞などで見るような「スポーツ写真」という類いの写真とは少し趣向が異なるものだ。試合前の緊張した面持ち、走者が走り終わったあとに倒れ込む様子、報道陣に囲まれたときの現場の空気感。「自分自身が、スポーツをしていたときのことを思い出すと、印象に残っているのは競技の前後だったりするんです。アスリートにとって試合は大切ですが一瞬の出来事で、試合までの準備や練習がその生活のほとんどを占めていますから、そういうときこそ写真に焼き付けておきたいと思います」。

 


(写真)ニューヨークを訪れた際には、街を気軽にランニングするランナーにも目が留まったそう。自分ももっと気軽に走ってみよう、と思ったとか。

 

「仕事を通して様々なジャンルのプロフェッショナルに会う機会がありますが、『カラダに向き合う人』は素直に、自分自身の向上を目指している。そんな姿は、どこか純粋な印象を受けます。」 ゴールテープを切った瞬間、得点が決まった瞬間、アスリートが輝くのは、その一瞬だけではない。本気で取り組むその日常の表情こそ美しい。レンズを通して見つめているのは、カラダに向き合い続ける人の真摯な姿勢やその裏にある信念だった。

 

写真/松本昇大 文章/平井莉生

松本昇大
1983年、大阪府生まれ。写真専門学校を経て2008年より写真家・若木信吾に師事。2011年、独立し、『BRUTUS』をはじめ様々な雑誌や広告などで活躍する。

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