065

パリで知る歩く喜び走る楽しさ
2014.06.20

パリで知る歩く喜び走る楽しさ
16区で、ギマール建築を巡る。

「普段、日本にいる時にはほとんど歩かない。なのに、パリに来てからは、時間があるとずっと歩いてる」。出張でパリにいらした方から、そんな声をよく聞きます。散歩するだけでも気持ちのいいパリですが、人通りも交通量もぐっと少ない日曜の朝は、ジョギングに最適です。フランスは、デパートを始めショップも日曜・祝日はお休みですし、観光で回るのも良いけれど混雑は必至。それならいっそのこと、朝ジョギングをして、ゆっくりとランチを楽しむ。これまでと違ったパリの過ごし方をしてみませんか?

 

第2回目の今日は、パリ西部に広がる16区の建築を巡るコースのご紹介です。メインは、アール・ヌーボー建築の代表者、エクトール・ギマールの作品が並ぶフォンテーヌ通り。同時期に、鉄筋コンクリート造の建築で先駆者として知られるオーギュスト・ペレ、ペレから影響を受けたル・コルビュジエ、アール・デコの集合住宅を手がけたマレ=ステヴァンスの建築も辿ります。前回が平坦な道が多かったのに比べ、今回は結構坂があるので、ウォーキングにおすすめです!では、いざ出発!

 

スタートは、モンテーニュ通りにあるシャンゼリゼ劇場から。
オーギュスト・ペレの設計で1913年に完成した、アール・デコとクラシックの調和が美しい建物です。オペラやコンサートの開催される3つのホールが収容されています。

 

 

シャンゼリゼ劇場を右手に、アルマ広場place de l’Almaに向かいます。エッフェル塔の見える広場に出たら、セーヌ川を左に見て2本目、右斜め前にあるプレジダン・ウィルソン通りAvenue du Président Wilsonへ。すぐにある2叉路は、左側の道に進みます。ここには毎週水・土曜の午前中に大きなマルシェが出ます。質の良い野菜や果物の店舗に混じって、ブルターニュのクレープスタンドなんかもありますよ。

 

ゆるい坂をのぼり7叉路に出たら、そこはイエナ広場place d’Iénaです。正面にある円形の建物は、1937-39に造られたペレ建築。現在は経済社会評議会の本拠地になっています。
広場を渡り、そのままプレジダン・ウィルソン通りを進みましょう。

 

次の7叉路はトロカデロ広場。エッフェル塔を左手に見つつ、通り過ぎ……、そのまま進んで、人類博物館に沿ったバンジャマン・フランクラン通りrue Benjamin Franklinに入りましょう。ほどなくして、明らかに周りと様相の異なる建物が右手に見えてきます。

 

 

 

ペレ兄弟の設計で1903年に完成。パリで、鉄筋コンクリートを使用した最初期の建築の1つです。遠目だと分かりにくいですが、ファサードは花模様のタイルで覆われています。

 

すぐ先の角地には、ボーウィンドウが印象的なカクカクとした建物があり、こちらも見応えがあって面白いです。
そのまま進むとまた7叉路にぶつかります。パッシーPassy駅にも通じるコスタ・リカ広場です。広場を渡って向かい側にあるレヌアール通りrue Raynouardへ。アール・ヌーボーとアール・デコ期の建築が混在する通りを500メートルほど行った左手に、1932年に建てられたペレ建築があります。最上階2フロアを自宅兼オフィスとして使用し、生涯の半分ほどを過ごした場所。セーヌ川を臨み、エッフェル塔も目前に迫る好立地です。

 

 

右側の歩道をそのまま進んで結構な勾配の坂を下ります。カフェやパン屋などいくつかの商店を過ぎ、フォーンテーヌ通りrue la Fontaineに入ると、前にタツノオトシゴの鉄製細工が見えてくるはず!

 

ギマールを一躍有名にした、1898年完成の“カステル・ベランジェCastel Béranger”です。
脇にある小道を入ると、建物の中庭側が見られます。写真だと見えないのですが、窓にも装飾が施されていて美しいです。この写真の右端や奥の壁にも、タツノオトシゴがいるの、分かりますか?

 

 

フォンテーヌ通りを進行方向に進んだ、角にある大きな建物もギマールによるもの。1階にあるカフェ・アントワーヌCafé Antoineで、世界観に浸りながらちょっと休憩するのもいいですね(でも日曜日はお休みです)。その先にあるアガール通りrue Agarの標識は、形も字体もギマール感いっぱい。

 

フォンテーヌ通りには60番地にもギマール建築(Hôtel Mezzara)があります。
カフェにパン屋、花屋、銀行のある5叉路に着いたら、すぐ右のモンテーニュ通りAvenue Mozartに曲がりましょう。今の季節には緑が美しい並木道で、クラシックな建物が並びます。
ゆるやかな傾斜の道を少しのぼって左手120番地にあるのが、1912年造のギマールのオフィス兼自邸だった建物です。

 

次の交差点で、左斜め前に伸びるアンリ・エヌ通りrue Henri Heineに進みます。突き当たりのドクトゥール・ブランシュ通りrue du Docteur Blancheを左折。30メートルくらい行った左にコルビュジエ財団の入り口があります。

 

 

この通りの奥に、財団事務所となっているジャンヌレ邸(見学不可)と一般公開されているラ・ロッシュ邸(共に1923 年造)があるのですが、2015年1月までの予定で現在外壁を工事中。ただ、内部の見学は可能です。アール・ヌーボーを見たあとに、コルビュジエの緩やかな曲線や平面の世界を目の当たりにすると、かなりのインパクトがありますよ。

 

そして今度はドクトゥール・ブランシュ通りを来た方向に戻るかんじで、北へ。2本道を越えると、右手に色々な大きさの窓が配されたモダンな建物が見えてきます。この建物の有る通りは袋小路で、通り沿いにある5棟のアトリエ住宅がロベール・マレ=ステヴァンスによるもの。通りの名もマレ=ステヴァンス通り!で、1927年に落成式が行われています。
コルビュジエの建築とともに、1920年代に造られたこれらの建物が、周辺にちらほら見つかるその数十年あとに建てられたものよりもずっとモダンで魅力的に見えることに驚きます。

 

 

建築巡りはこれで終了。
でも、せっかくここまで来たので、あとは16区らしいクラシックなエリアをマルモッタン美術館まで行くことにしましょう。
ドクトゥール・ブランシュ通りを北上し、アッソンプシオン通りrue de l’Assomptionにぶつかったら左折。突き当たりのボーセジュール通りbd de Beauséjourを右へ。1本目の道、ラヌラグ通りの向かい側にこんな小屋(靴修理屋)があります。

 

 

脇の小道を抜け、右斜め前にある見える横断歩道を渡って、ラファエル通りAvenue Raphaëlに入ったらまっすぐ。ラヌラグ公園を右手に並木道を進むと、ひとつめの角にマルモッタン美術館があります。そこで、GOAL!

 

今回のコースは6.5km弱。山手線で新宿—目黒くらいの距離です。意外に歩きがいがあります。各建物の住所を地図アプリに入れていただくと、16区をかなり歩くことがわかるはず!
どこか目的地を訪れるのではなく、歩いて、通り過ぎながら街に馴染む建築を見て行くのは、なかなか楽しいです。人通りの多いところはトロカデロ広場くらいなので、今回のコースは平日でもスムーズにいけます!中心から足を伸ばして、こんなふうにパリの街を巡ってみると、新たなパリの魅力を発見できること請け合いです!

 

●今回のコース

 

シャンゼリゼ劇場 Théâtre des Champs-Elysées 13-15, avenue Montainge 75008
ペレの集合住宅 25bis, rue Benjamin-Franklin 75116
ペレのアパート 51-55, rue Raynouard 75016 
カステル・ベランジェ 14, rue Jean de la Fontaine 75016
カフェ・アントワーヌ Café Antoine 17, rue Jean de la Fontaine 75016
ギマールの集合住宅 19-21, rue Jean de la Fontaine 75016
オテル・メザラ(ギマール建築) 60, rue Jean de la Fontaine 75016
ギマール邸 122, avenue Mozart 75016
ジャンヌレ邸、ラ・ロッシュ邸 8-10, square du Docteur Blanche 75016
マレ=ステヴァンス通り rue Mallet-Stevens 75016
マルモッタン美術館 Musée Marmottan Monet 2,rue Louis Boilly 75016

 

川村明子
かわむら・あきこ
フードライター。98年に渡仏。「ル・コルドン・ブルー・パリ」にて料理・製菓・パン課程修了。著書に、『パリのビストロ手帖』 『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)。朝ごはんブログmes petits-déjeunersも随時更新中。ジョギングは2年前に初めて、フルマラソン歴はまだ2回。

PAGE TOP