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カラダにいい映画
2014.06.18

カラダにいい映画 第4回
スポーツと、親と子の良い関係

BRUTUSで主に映画ページを担当するライター・門間雄介さんが選ぶ、「カラダにいい映画」をご紹介。

 

 

 スポーツや運動を通じて、そこに参加する人同士の結びつきや一体感は強まりますが、それが“親と子”であっても例外ではありません。感動の名作として人気の高い『チャンプ』(1979)は、男手ひとつでわが子を育てるボクシングの元世界チャンピオンと、彼を“チャンプ”と慕う息子の物語。7年前に現役を退き、今では酒とギャンブルに現を抜かす父は、息子に勇姿を見せるため再びリングに立つ決意をするのですが……。ロードワークに取り組む父のそばを一時も離れない息子と、愛する息子に最後のメッセージを届けようとする父。ふたりのつながりは、ボクシングを通じて、そしてその衝撃的な結末を通じて、さらに掛け替えのないものへと変わります。美しい涙とともに。

 

『スマイル、アゲイン』(2013)の主人公はサッカーの元スコットランド代表、ジョージ・ドライヤー。現役時代はスター・プレイヤーとして脚光を浴びながら、放埓な生活で金も家族も失った彼は、再び妻子との暮らしを取り戻すためアメリカの田舎町へやってきます。そこで元妻から「今まで子どものために何かしたことがあった?」と問われ、ジョージは息子が所属する少年サッカー・チームのコーチに。情熱的なコーチングで、子どもたちはおろか、その母親たちのハートまでつかんでしまったのは計算外でしたが、ともあれジョージと息子との間には強い絆が育まれていきます。印象深いのは、「サッカーをやめたい」と言い出した息子を連れて、雨のフィールドで行うマンツーマンのトレーニング。ずぶ濡れになりながら、誰かと夢中になって体を動かした経験は、たとえほんのわずかな時間であったとしても、大切な思い出としてずっと留め置かれるものです。しかも、それが親子のふれあいだとしたら、なおさら。

 

 スポーツを通して親子の愛を描いた不朽の名作といえば『フィールド・オブ・ドリームス』(1989)でしょう。冒頭、主人公のレイ・キンセラは、今は亡き父、ジョンのことを振り返ります。ジョンは1896年生まれ。おとぎ話がわりにベーブ・ルースやシューレス・ジョー・ジャクソンら名選手の話をする野球好きで、自身もマイナー・リーグで12年間選手として過ごしました。しかし、そんな父から野球選手の夢を託されたレイは、それを重荷に感じ、17歳の時に家出してしまいます。そして、不和のまま亡くなった父。「それを作れば彼はやってくる」という“声”が聞こえたのは、レイが結婚し、娘もすくすくと成長したあとのことです。トウモロコシ畑を潰し、野球場を建設すると、そこに八百長事件で球界を追放されたまま生涯を終えたシューレス・ジョー・ジャクソンがやってきて、さらに“彼”も――。ラストシーンのキャッチボールを観れば、誰もがきっと、親と一緒に時間を過ごした遠い日の記憶を呼び覚まされるはずです。

 

■『チャンプ』
監督:フランコ・ゼフィレッリ、出演:ジョン・ヴォイト/妻と別れ、今は厩務員として生計を立てる元ボクサーのビリー。彼が再び世界タイトルに挑戦する姿を、息子に扮した子役の名演とともに描く感動作。主演のジョン・ヴォイトはアンジェリーナ・ジョリーの父。

 

■『スマイル、アゲイン』
監督:ガブリエレ・ムッチーノ、出演:ジェラルド・バトラー/ベッカムらとしのぎを削ったサッカーの元スター選手が、失ったものを取り戻そうと奮闘する、笑えて泣ける人間ドラマ。ユマ・サーマン、キャサリン・ゼタ・ジョーンズら共演の女優陣も豪華。

 

■『フィールド・オブ・ドリームス』
監督:フィル・アルデン・ロビンソン、出演:ケヴィン・コスナー/「それを作れば彼はやってくる」「彼の苦痛を癒せ」……次々と聞こえる“声”に導かれるまま、野球場を作り、往年の名選手たちを召喚したレイが、最後に出会う相手とは。愛と夢に満ち溢れた傑作。

 

門間雄介
もんま・ゆうすけ
編集者、ライター。「CUT」元副編集長。08年「T.」創刊。編著書に「実験4号」伊坂幸太郎×山下敦弘など。BRUTUSをはじめ、多数の雑誌で編集執筆。イオンシネマ「シネパス」の作品選定などにも携わる。

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