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カラダにいい音楽
2014.01.07

カラダにいい「音楽」第一回
健全な肉体を持った音楽家達。

BRUTUSで主に音楽ページを担当するライター・渡辺克己さんが選ぶ、「カラダにいい音楽」をご紹介。

「健康にいい音楽」。まずこんな言葉で伝えられるCDがあったなら、手に取らないことをお勧めします。

 

 しかし、人間の心と身体の負担を和らげることに音楽が用いられることは多い。また、世界大戦中には兵士たちの荒んだ心身を癒すため、キャンプや野戦病院で朗らかなポップスやジャズが流されたという記録がある。さらにストレスや疲労を和らげるため、アルファー波による音波療法の研究が進んでいる。

 

 もちろん、音楽は直接人体に影響を与えるものではない。しかし、健全な肉体を持ったミュージシャンからは、健全な音楽が奏でられ、リスナーの精神状態にも影響を与えることはある。

 

 その例として最も顕著なのがマドンナだ。デビュー当時から、完璧なステージ表現を追求するため、トレーニングなどの肉体作りに余念はなかった彼女。しかし、90年代には『エロティカ』(92年)、『ベッドタイム・ストーリー』(94年)など、かなりキワドい問題作を連発。ポップスターとして人気は極めたが、作品はもう完全に“夜”のオンナの音楽だった。その後96年、長女を出産すると同時に、体系補正と維持のためヨガを取り入れる。以降はグルジ(彼女が傾倒したアシュタンガヨガの創始者、シュリ・K・パタビジョイス)の教えに習い、不摂生な生活を改め、朝日と共に瞑想、ヨガに励みながら、育児に専念して規則正しい生活を送っていたという。それに伴い、作品の内容も激変する。『レイ・オブ・ライト』(98年)は、前作のセクシャルなイメージから一転。壮大で美しいオーケストラの「フローズン」、全編インドの言葉で歌われヨガからの影響が露呈される「シャンティ/アシュタンガ」、娘に捧げた「リトル・スター」など。ヨガの思想を反映させたような東洋的な音階、パーカッションを多用した楽曲など、暖かみのある楽曲が大半を占められている。ウィリアム・オービット作による繊細な楽曲に、優しいマドンナの歌声。ポップアンビエントの傑作として、今でも多くの人の耳、そして心と身体を癒している傑作だ。

 

■マドンナ『レイ・オブ・ライト』(ワーナーミュージックジャパン)
転機となった通算8枚目のアルバム。80年代のセックスシンボルから脱却し、ヨガの深い精神世界と海のような母性を手に入れた傑作。ポップスターとしてではなく、アーティストとしての評価が高まった。

 

■ローリング・ストーンズ『刺青の男』(ソニーミュージック・インターナショナル)
誰よりも不健康のイメージで時代を突っ走ったストーンズ。トラブル乗り越え、81年にクリーンな身体で再び集まった復帰作。不良もカッコいいけど、70歳にしてステージをかけまわるミック・ジャガーやキース・リチャードも神々しい。

 

■ロバート・プラント&アリソン・クラウス『レイジング・サンド』(ワーナーミュージックジャパン)
ハイトーンボーカルで知られるレッド・ツェッペリンのボーカリスト。激しい活動な末に行き着いたのがカントリー&ウェスタン。歌手のアリソン・クラウスとの共作は自らの疲れを癒すかのごとく、優しく美しい響きを伴っている。

渡辺克己
わたなべかつみ
ライター。『BRUTUS』や『CasaBRUTUS』などで、音楽ページを担当。夜は、DJとしても活動中。

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